『木の実』

おかしな事を言う様ですが、私自身みかんづくりをしておきながら、不思議に思う時があります。

≪どうして、みかんの木は実を成らせるのだろう?≫

人が食べる実を成らせるから畑に植え、みかんづくりをしています。
それでも、みかんの木は人に食べてもらおうと、実を付けるわけではありません。

我が家は、みかんの種類は一通りありますが、みかん専業なので他の果物といえば、柿と梅の木が少しあるだけです。

みかん農家である私自身も、それぞれの季節、旬の果物が食べたくなります。
特に、みかんの収穫が近づく初秋の果物は、今年のみかんの出来を占うかの如く、味を確かめながら食べています。

みかん畑のすぐ側には、昔から人が手を入れていない山があります。
山には自然の木が自生し、やはり実を成らせます。
それは、人が好んで食べる様な実ではなく、いずれ地面に落ち、そのままの物もあれば、鳥を初めとする山の動物達に食べられる物もあります。
動物達に食べられた実は、中の種を遠くに運んでもらい、別の場所で芽吹くのでしょう。

きっと、みかんの木も元をたどれば、それらと同じ山の木の一つだったのでしょう。
それを人が目を付け畑に植え、より人が好む果実が成る様、長い年月をかけて改良され、美味しい果物として今のみかんが出来たのです。

以前は、その年のみかんの出始めとして、時期的に希少性があるとゆう事で、青切りみかんの出荷もなされていました。
ですが今は、みかんを木に成らせた状態で熟させる、完熟が主流です。

早く熟す種類の順番では、10月の極早生から始まり、11月の早生、12月には、御歳暮にも多く用いられる早生・中生。
そして、年が明け1月からは、山小屋・蔵などで貯蔵・熟成された晩生。蔵出しみかんが始まります。
みかんの出荷・販売期間は、他の果物類と比べても長く。
その極早生・早生・中生・晩生の中でも、幾つもの品種があります。
3月となれば、蔵出しみかんと共にデコポン・伊予柑などの晩柑類が出始めとなり、八朔・清見・甘夏などへと続きます。

年間を通し多くの果物類が出回りますが、それらも皆、元をたどれば、みかんと同じ様に山の木の一つだったのでしょう。

しかし、人が好む美味しい果実を成らす様になったという事は反面、山の木からは、それだけ離れてしまった事になります。
そして、それは人の手を離れては、生きて行けなくなった、とも言えます。

私がみかんづくりをしている、みかん山でも、つくるのを止めてしまった畑があります。
人の手を離れた畑は、すぐに草が伸び、木を枯らす虫が、はびこります。
やがて山の木が生え、みかんの木は虫に負けて枯れてしまいます。
山の木の生命力は強く、数年後には、そこに畑があったのかさえも判らない程になります。

みかんの木は、人に食べてもらおうと実を付けるわけではありません。
ですが、人の手を離れると枯れてしまいます。
そして、人が世話をし続ければ毎年の様に、みかんを実らせます。

4月、去年の実り・収穫を終えたみかんの木が、春の暖かさと共に再び動き出します。
冬の間,実りの疲れをとりながら、眠っていたかの様なみかんの木からは、新芽が出始めます。

やがて花の蕾が見え始め、5月には開花・満開を迎えます。
みかんの木は果物類にしては、あまり無い常緑樹です。
ですので、たとえ花の満開であったとはいえ、桜の木の様な見事に咲き誇る見栄えの良さはありません。
その花は白く、どちらかと言えば小さく。
地味でかわいい印象です。

この時期畑には、花の匂いに誘われて無数の蜜蜂がやって来ます。
花の蜜を吸い、お腹がいっぱいになれば、何処かにある巣へと持ち帰っています。
花から花、木から木へと大忙しに飛び回り、日中その羽音が止む事はありません。

花が終わり6月ともなれば再び、その年のみのり小さな実をつけます。
日差しは夏の物に近づき、雨がよく降り、気温も上昇。
蒸し暑さの中での畑仕事となります。

梅雨も本格的となれば、みかんの木は、春に出た新芽が伸びきり、葉も広がり、根は春に施した肥料と共に、土の水分をどんどん吸い上げます。

まだ小さい実は、花が終わってからのこの時期、自然な落果をします。
生理落果というのですが、これは咲いた花は一旦は、すべて実となるのですが、木の栄養状態・気温や日照時間などの天候条件によって、みかんの木が自ら実を落とすのです。
多くの実を付けた木ほど、生理落果の頻度は高くて、夕暮れ時など農作業をしていると、みかん畑のあちこちから、その小さな実の落ちる音が聞こえてきます。

又この時期、花や実の少ない木があります。
それは木によってであったり、もしくは、一つの園地ごと・山ごとの場合もあります。
これは、農業でよく言われる裏年にあたる物です。
そういった木からは、実が少ない代わりに多くの新芽・新葉が出ます。
今年この新芽の多い木程、来年には多くの花そして実をつけます。

梅雨が明け、7月中旬となれば夏本番の始まりです。
畑の近くの山では、セミが日中うるさい程に鳴いています。
これからの季節みかん畑での農作業は、まさに暑さとの闘いになります。

夏の間、みかんづくりで大きな割合を占める作業が、摘果です。
6月に盛んだった生理落果も終わり。
それでも、みかんの木には、多すぎる程の実が付いています。
それだけ多くの実を付けたままにしておくと、木が蓄えた養分が多すぎるみかんに分散されてしまい、秋の収穫時には、小粒のみかんばかりになってしまいます。
そこで、その木のバランスに応じた適正な量に調整する為、まだ青く小さなみかんの内に一つ一つ木から、ちぎり落としてゆくのが摘果です。
夏の暑さの中、実にしんどい仕事です。

その際、秋に味の良くなるみかんや、果皮の少しでも美しいみかんを残し、そうでないみかんを中心に木からちぎり落としてゆきます。
多くの実を付けた木を摘果し終えるには一時間程かかり、下の地面が、その実でいっぱいになる程です。
この作業を熟すのが早い極早生から始め、順に早生・中生・晩生と、みかん畑全体にみかんの収穫が始まる前、10月の中旬頃まで続けるのです。

又、例年梅雨が終わると日照りが続き、それまで畑が蓄えていた水分が失われ、干ばつとなります。
そうなると夏の暑さの中、みかんの木も水分を失い、葉を落とし、枯れるのではないかと思う程の状態になります。

そうなれば畑では、川の水を使い、地下水をくみ上げての水やり・潅水作業が始まります。
それでも夏の暑さには勝てず、それ以上、木が弱らない様にするのが精一杯です。
摘果をしながらの潅水作業で、9月に入り雨が降るまでの間、みかん農家は大忙しとなります。

それでも、やがて雨が降り出せば、弱っていたみかんの木も元気を取り戻し、農家も一息つく事が出来ます。

10月ともなれば、気候も秋の物となり、畑での作業も随分と楽になります。
夏の間、あれ程うるさかったセミの声も聞こえなくなり、変わり秋の虫、スズムシやコオロギの鳴き声が、よく聞こえる様になります。
夕暮れ時など農作業していると、畑のあちこちから、その鳴き声が聞こえて来て、季節の進みを感じます。

我が家にはありませんが、みかん畑の近くには水田もあり、稲作が行われています。
この時期はすでに稲刈りが始まり、新米の収穫が行われています。

みかんの木は、秋の雨を吸い上げ、実は夏に比べ一回り、二回りと大きくなります。
枝は、その実の重みで垂れ下がり、実を多く付けた木では、たわわに実ったその重さで、枝がへし折れんばかりになります。
そこで、摘果をやりながら,枝を支柱で下から支える作業を行います。

それまで青かったみかんは、熟すのが早い極早生から順に、徐々に色づき初めます。
そして、極早生みかんをつくっている農家では、収穫・出荷が始まります。
岩本農園も、わずかに極早生はあるのですが、出荷する程の量がありません。
今年のみかんの出来を確かめながら、家族で食べたり、知り合いにあげて無くなります。

農作業の合間、休憩がてら畑の近くの山に入れば、自生している、あけびが食べ頃になっています。
街の方々には馴染みの無い木の実でしょうが、甘味もあり美味しいです。
只、難点なのが種が多い事です。
この種は噛んでしまうと苦く、あけびを食べるには、少し慣れが必要でしょうか。

つる性の植物で、山の木に巻き付きながら成長し、所どころに楕円形の実をならせます。
この実が中央から割れ開き、中の実が見えた時が一番の食べ頃です。
しかし、その状態になると山の鳥、ひよ鳥などに直ぐに食べられ、残りの皮だけになってしまいます。
そこで、あけびの中央が割れかけた時が、人にとっての採り頃になります。

又、時折やって来る台風には、世話を続けた畑が荒らされてしまわないかと、冷や冷やします。
もし、直撃を受け様ものなら、みかんや枝が引きちぎられ、木ごとなぎ倒されたりもします。
過去には何度か、そういう事があり、自然が相手とはいえ、みかんの世話を続けたこの時期だけに、悔しい思いがありました。

11月ともなれば秋本番となり、朝夕の冷え込みには、上着を1枚、2枚と着込んでの畑仕事になります。

そして、この頃から山の動物達が、畑に頻繁にやって来る様になります。
猪やひよ鳥、狸やあらいぐまなどです。
猪は畑中を歩き回り、目を付けたみかんの木を食害します。
食欲旺盛で、かなりの被害を受け、頭を悩まされます。
狸やあらいぐまなども同様です。

ひよ鳥ですが、この鳥は、みかん農家にとっては大敵です。
みかんが熟した頃に群れでやって来て、みかんをつつき食害します。
食害されたみかんは当然駄目で、収穫の際に畑で切り落とします。
食害に気付かず採り入れてしまうと、入れ物の中で腐り、それが周りのみかんに移って大変な事になってしまいます。

ですので、出来るだけ山の動物達に、食害される前に採り入れを済ませたく、この先始まるみかんの収穫は、それら山の動物達との競争とも言えます。

そして、みかんは収穫間近となります。
早生は完熟に近づき、みかん山はみかん色へと染まってゆきます。

11月中旬いよいよ、みかんの収穫が始まります。
収穫用のかごを肩から下げ、収穫用のハサミでみかんを一つ一つ、傷付け無いよう気を付けながら、枝から切り採ってゆきます。
そして、そのみかんをまた一つ一つ丁寧に、収穫かごへと入れてゆきます。
みかんで、かごがいっぱいになると、その重みでズシリと肩が痛い程になります。

かごいっぱいになった、みかんをコンテナーに移し、再び木からみかんを切り採り、収穫かごへ。
高所になったみかんは、脚立を使いながら。
この作業を一日中繰り返します。
実に根気のいる仕事です。

年内出荷用のみかんは、そのままコンテナーで倉庫に運び入れ、荷造り・出荷を行います。

年が明けての1月・2月出荷用のみかんは、木箱へと丁寧に移し、山小屋・蔵などに貯蔵してゆきます。

これは、晩生と呼ばれる品種で、収穫直後よりも蔵の中で1か月・2か月貯蔵する事により、味が熟成され、より美味しいみかんへとなる為です。
ですので1月・2月には、このみかんを蔵出しと名付け出荷しています。

12月ともなれば、気候も冬型となり寒い日が多くなります。
みかん山も、より一層みかん色を濃くしてゆき、一年一度の実りの色に染まります。

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